「すずき内科クリニック」は、白い壁と赤い屋根の外観が目印のかわいらしいクリニックです。
明るい院内には、待合室にソファが多く置かれ、来院した人をリラックスさせる雰囲気があります。
鈴木伸院長は優しい笑顔が印象的。患者の家族から似顔絵のプレゼントをもらうなど、信頼し慕われていることが伝わってきます。
循環器内科の分野において高い専門性を持って長年活躍してきた実績を持ち、地域医療に携わりたいと考え開業され、4年が経過しました。地域に根ざした医院として、地域の人々と密接に関わり、健康増進に貢献したいという強い思いを抱く院長に話を伺いました。
(取材日2020年2月18日)
循環器内科の専門医療から地域医療へ
まず医師をめざした理由を教えてください。
母親が開業医で、自然と「将来は医師の仕事もいいなあ」と思っていました。医学部では、基礎医学から臨床医学まで広く学び、その中でも基本となる内科に決めました。
循環器内科の専門的なことを極めていくのはとても楽しいことでした。その一方で地域に根ざした全人的医療をいずれ行いたいと考えていました。
勤務医時代で印象に残っていることはありますか?
国立循環器病センターに国内留学という形で行かせていただきましたが、私にとって、医師としての原点のような基礎を学んだと思っています。全国から、若い医師がレジデント(研修医)として集まってきていました。皆さんが、専門書を英語で読んでいるのにカルチャーショックを覚えましたね。
3年間で多くの症例を経験でき、不整脈の大江先生や冠動脈疾患の土師先生、心不全・超音波の宮武先生といった多くの立派な先生に出会うことも出来ました。
心臓カテーテルチームを立ち上げられたそうですね。
はい。それからJA静岡厚生連遠州病院に赴任し、そこで心臓カテーテルチームを立ち上げました。大変でしたが、若かったこともあり楽しかったです。
その後名古屋市立城北病院(現・名古屋市立西部医療センター)でも心臓カテーテルチームを立ち上げるプロジェクトを担当しました。新しいことを始めるには、いろいろな人とのコミュニケーションや信頼関係が必要でした。みんな興味を持って取り組んでくれたのが良かったです。
名古屋市立東部医療センターでは、主に不整脈部門を担当し、先進の機器を使ってカテーテルで心臓の電位をマッピングしながら行う不整脈治療をしていました。研修医時代には想像もできなかった心房細動のカテーテル治療をしながら、時代の変遷を実感していました。
その後開業に至ったきっかけは何だったのでしょう?
50歳頃から、そろそろ地域に根ざした医療をやりたいな、と思っていました。
しっかりと患者さんに向き合う地域医療をやりたい気持ちは以前からありましたから。
開業して4年余りになりました。今もいろいろ勉強しながら幅広く裾野を広げてやっている感じですね。ここに開業したのは、偶然この場所で開業されていた先生が引き継ぎを募集されていたからなんです。住宅地で穏やかな患者さんが多いので、良いところだなあと思っています。患者層は、若いお母さんとお子さんが小児科に来られるのと、中高年の高血圧や心臓病の患者さんが循環器専門を頼って来てくだることが増え、とてもうれしいです。
健康長寿をテーマに地域に密着した医療を
現在力を入れている治療は何ですか?
今特に関心を持っているのは、睡眠時無呼吸症候群です。名古屋市立東部医療センターで不整脈のカテーテル治療をしていたとき、不整脈の方に無呼吸がとても多いとわかったんです。それ以来興味を持っていて、開業した時に検査機器を導入。可能性のありそうな患者さんに聞いてみると、睡眠に関して不安や疑問を持っている方は多く、検査をしてみるとやっぱりそうだった、ということが結構あります。血圧が高い方や不整脈がある方は一度検査してみると良いと思います。入院せずに自宅で測定できる簡易型の検査機器を導入し、すでに何名かにご利用いただいています。自宅で2日分の、睡眠時の呼吸の流量と酸素濃度を計測してもらいます。
治療はどのように行うのでしょうか?
治療方法としては、酸素治療の機械を使って、夜間寝ている時に酸素を送ります。睡眠時無呼吸症候群は、喉の奥が締まって呼吸ができなくなるので、空気を送って広げて酸素が届くようにするんです。この疾患で一番困るのは昼間に眠くなることですが、酸素治療をすると熟睡できるため、昼間の眠気は減少していきます。酸素治療までは……という患者さんにはマウスピースをお勧めしています。実は生活習慣病にも関連していて、例えばメタボリック症候群の方は無呼吸になりやすいといわれています。また、高血圧で特に早朝の血圧が高い人は、ご家族に聞いてみると無呼吸やいびきなどの症状があることが多いのです。夜間十分に眠れていないため昼間に眠く、交通事故の原因にもなっていたりするので、気を付けて見ていきたいと思っています。
その他にクリニックの特色や得意な診療はありますか。
たとえば心筋梗塞などの心臓疾患の二次予防として、血圧、コレステロール、血糖といった生活習慣病の危険因子をきちんと管理しながら診ていくことは、専門分野としてぜひやっていきたい。高血圧の患者さんに血圧手帳をお渡しして、家庭血圧を測るようにお話しています。診察の時には血圧のグラフを見ながらコミュニケーションをとるように心がけています。地域のクリニックとして、皆さんが健康寿命を長く保って、ご高齢になっても快適に生活できるためのサポートをしていきたいです。
禁煙治療などまで幅広く診てくださっていますね。
タバコを吸っている人の禁煙治療や、肺気腫や閉塞性肺疾患を診るための肺機能検査も可能です。
女性においては骨粗しょう症が非常に大きな問題。転倒骨折して、動けなくなって健康寿命が短くなるということがあります。その予防にはしっかり力を入れたいと思っているので、超音波で行う骨粗しょう症のスクリーニング検査は注意が必要な中高年の女性には積極的に勧めています。
患者の要望に答え家族全員を診られるクリニックに
さまざまな検査機器を取り入れているのですね。
外来でさまざまな患者さんを診ていると、症状ごとに違う専門のクリニックで検査や治療を受けている人が多いので、クリニック内である程度の検査は幅広くできるようにしたほうが、患者さんにとって負担が少ないなと。
また、糖尿病の人は血管が悪くなるので心筋梗塞狭心症になりやすい。実は、心筋梗塞狭心症になる人の40%くらいが糖尿病を抱えているんです。HbA1cという糖尿病検査を院内でできるようにし、その場で治療計画を立てています。高齢化社会なので、糖尿病の患者さんは日本でどんどん増えていますね。ただ、薬も新しいものが出てきているので、昔に比べると治療しやすく、コントロールできるようにはなってきています。
院長は日本内科学会総合内科専門医の資格も取られていますね。
普通の内科認定医の先生と総合内科専門医と、実際にどのくらい違うのかというと、説明は難しいんですけれどね。僕の場合、専門は循環器だけれど、基本は常に内科医だと思ってやってきているので、総合内科専門医の試験を受けました。資格に見合った力を維持するために、講習などは多く受けなければなりません。一般内科医として、幅広いベースがあった上で専門的に診られることが理想だと思っているので、土台はしっかりしておこうというつもりで資格を取り、今も維持し続けています。
今後はどのような医療をめざしていきたいと考えていますか。
お子さんも含めて、ご家族が安心して来てもらえる医院であり続けたいと思っています。
小児科の専門的な症状の場合は、専門家に診てもらったほうが良いという判断をしますが、ちょっと体調が悪いとか発熱には対応しています。乳幼児の予防接種は種類も増え、計画を立てるのは大変ですが、体調の良い時にいつでも接種できるよう予約なしで行っています。スケジュール表もお渡しし、次はいつが良いかなど、スタッフが丁寧に説明してくれています。事務も看護師も皆さん優秀でやさしい人ばかりなので助かっています。
フレイル対策にも取り組まれているとか。
はい、フレイルとは健常な状態から要介護状態になるまでの中間的な段階のことです。フレイルの状態や調光を知り、適切な治療や予防を行うことで、要介護状態に進まずにすむ可能性が高まります。
人生100年時代と言われ、健康に過ごせるように健康寿命を伸ばしたいですよね。医師として、病気の治療だけでなく、地域のみなさんが、健康に笑顔で長生きしていただけるようにサポートしたいと思っています。そこで、
食事でタンパク質を多く摂ったり、ご自宅で簡単にできるレジスタンス運動を取り入れたりする生活指導を行っています。